このページでは、暮らしのレシピになる様々な情報を掲載。読者や編集部員の質問「昆布出汁はなぜ切り刻まないのですか?そのほうがたくさん出汁がとれる気がします。」に、ズバッと結論から回答しています。
昆布出汁はなぜ切り刻まないのですか?そのほうがたくさん出汁がとれる気がします。
結論:切り刻んだほうが濃い出汁がとれる!
昆布出汁は、一般的な出汁の取り方でいうと「長い状態の昆布を水につけている」状態が多いですよね。切ったほうが表面積が多くなり、たくさん出汁も取れる気がするのも、わかります。
昔は昆布を切り刻んで使っていたこともあるようですが、いまでは切らないほうが主流ですね。なにがどう違うの、まずは見てみましょう。
1. 昆布出汁の基本
昆布出汁を取る際の基本は、昆布を水に浸して、ゆっくりと時間をかけて旨味を引き出すことです。この過程で、昆布からグルタミン酸というアミノ酸が溶け出し、それが出汁の旨味の主成分となります。
2. 切り刻む方法のメリット
昆布を切り刻むことで、表面積が増えるため、水との接触面が増えます。その結果、旨味成分が水に溶け出しやすくなります。特に、時間を短縮したい場合や、濃い出汁を取りたい場合には、切り刻んだ昆布を使用すると効果的です。
さらにいうと、水に漬けるのではなく、沸騰させたお湯にいれてガンガン炊き上げる方法でも出汁がとれます。こちらは昆布の雑味もでてしまいますが、強い出汁の味という感じになります。塩だけの味つけでタレいらずの鍋物やうどんに使えることもあります。
3. 長い昆布をそのまま使用するメリット
長い昆布をそのまま水に入れて出汁を取る方法も、そのままの形状で昆布の旨味や風味をゆっくりと引き出すことができます。
特に、繊細な料理や、昆布の風味を生かしたい場合には、この方法がおすすめです。料亭の味に近づけたかったり、自分以外の誰かのために作る料理の目的としては、こちらのほうがよいでしょう。
また、昆布を再利用して、二度、三度と出汁を取ることも可能です。
4. どちらの方法がベストか
「切り刻むか、そのままか」という問いに対する答えは、使用する料理や目的によって異なります。濃い出汁を短時間で取りたい場合や、大量の出汁が必要な場合には、切り刻んだ昆布を使用すると良いでしょう。強い出汁が好きという方や、低コストで濃い昆布出汁を取りたいは、全然こちらの方法でいいと思います。
一方、昆布の風味を大切にしたい場合や、ゆっくりと時間をかけて出汁を取りたい場合には、長い昆布をそのまま使用するのがおすすめです。
昆布出汁を取る際の昆布の扱い方は、料理や目的によって選ぶべき方法が異なります。どちらの方法も、それぞれの特長やメリットがありますので、上手に使い分けて、最高の出汁を取り出しましょう。
昔は昆布を切り刻んで使っていたって本当ですか?
はい、そのようです。昆布での出汁の取り方には、歴史的な背景があります。昔の和食では、昆布を細かく切り刻み、強火で沸騰させて濃い出汁を取る方法が主流でした。
この方法は、「ダシの味一発」とも称され、出汁の濃さを重視していたようです。その理由として、醤油などの調味料が高価で一般の人々には手が出しにくかったため、濃い出汁と塩だけで味付けをしていたと言われています。
特に、江戸時代の庶民の多くが肉体労働者であり、彼らにはこのような濃い味が好まれました。
しかし、戦後の時代に入ると、出汁の味は薄口が好まれるように変わりました。そして、現代で一般的に知られる出汁の取り方は、実は比較的新しいものです。例えば、江戸時代から続く蕎麦屋では、一番出汁という技法(火にかけずに素材そのものから旨みを抽出する方法)は使用されていないのです。
現代の和食職人の中には、伝統的な方法を受け継ぎ、濃い出汁を取り、さらに煮詰めて「天然のダシの素」のように使用する方もいるようです。