このページでは、暮らしのレシピになる様々な情報を掲載。読者や編集部員の質問「映画等を見て泣いてスッキリする現象はなんですか?なんで泣いてスッキリするんでしょうか?」に、ズバッと結論から回答しています。

映画等を見て泣いてスッキリする現象はなんですか?
映画等を見て泣いてスッキリする現象の科学
映画などのエンターテインメント作品を観て感動し、泣いた後に心がスッキリと感じる現象は、心理学的、生理学的な要素が組み合わさっているものです。
まずは、この現象に関連する様々な側面を、論文をとりあげながら科学的にざっくり解説していきます。
感動の心理学 – 感情の共感
この現象は、感動の心理学に深く関連しています。人々は映画のキャラクターやストーリーに共感することで、感情を高め、涙を流すことが多いのです。このプロセスは、共感性の高まりからくるものとされています(Lazarus, R. S., 1991, “Emotion and Adaptation”)。
泣くことの生理学的効果 – ストレスの解消
泣く行為自体がストレス解消の効果を持つという研究があります。涙によって、ストレスホルモンであるコルチゾールが排泄されることが明らかにされています(Gračanin, A., et al., 2015, “Why crying does more good than harm”)。
カタルシス効果 – 心の浄化
カタルシス効果は、感情の解放や精神の浄化をもたらすと言われています。古代ギリシャの哲学者アリストテレスも、悲劇を観ることで感情が浄化されると考えました。
この効果は現代でも、心理学的な側面で研究されています(Frijda, N. H., 1988, “The laws of emotion”)。
音楽とのシナジー効果 – 感動の増幅
映画における音楽の効果も、感動を高める重要な要素です。音楽は感情を直接的に刺激し、視覚的な要素と合わせて泣くきっかけを創出することがあります。
音楽の感動と感情への影響についての研究が参考になります(Juslin, P. N., & Västfjäll, D., 2008, “Emotional responses to music”)。
人間関係への影響 – 共感のコミュニケーション
映画を共に観る経験は、人々の間で共感を生むコミュニケーションの手段ともなります。共通の体験を通じて、相手の感情を理解するプロセスが、人間関係を深化させる助けとなることが研究されています(Cohen, D., 2001, “The social self: On being the same and different at the same time”)。
泣いてスッキリする現象は科学的に説明可能!
映画等を見て泣いてスッキリする現象は、感動の共感、泣くことの生理学的効果、カタルシス効果、音楽とのシナジー、人間関係への影響など、多岐にわたる要素が組み合わさっているものと考えられます。
先に述べた科学的根拠に基づくと、この現象は私たちの心理や身体に深く根ざしており、人々が映画などのエンターテインメントに引き寄せられる理由の一端を解明していると言えるでしょう。

なるほど。共感性の高まりを説明した”Emotion and Adaptation”について、もっと詳しく教えてください。
“Emotion and Adaptation”は、リチャード・S・ラザルス(Richard S. Lazarus)によって書かれた著作で、1991年に出版されました。
この本では、ラザルスは感情の理論と適応のプロセスに焦点を当て、人間の感情がどのようにして個人の内面と外部の環境との間の相互作用から生じるのかについて述べられています。
共感性の高まりについての考察
ラザルスの理論における共感性の高まりは、人々が他人の感情に対して共感を感じ、共感する能力が、個人の感情を形成し理解する重要な要素であるという観点から解説されています。
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認知的評価: 人々は他人の感情や状況を観察し、それを自分の価値観や経験と関連付けて解釈します。この解釈のプロセスは、共感性の発生に重要です。
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感情の伝達: 共感することで、他人の感情を理解し、自分の感情と関連付けることができます。これにより、社会的なつながりが深まります。
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適応の側面: 共感は人々が社会的環境に適応する手段ともなります。他人との感情の共有は、個人間の関係を強化し、集団内での調和を促進します。
共感すると、感情が高まり、感動する
“Emotion and Adaptation”は、感情の複雑な構造を分析し、人間の感情がどのようにして発生し、進化するのかについて深い洞察を提供しています。
直接的に「泣いてスッキリする」ということを説明しているわけではありませんが、ラザルスの感情の理論を一般的な枠組みとして解釈すると、映画視聴での感動体験といくつかの接点が見つかります。以下、その考え方について述べます。
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認知的評価: 映画の中のキャラクター、ストーリー、またはテーマ性が視聴者の価値観や経験と共鳴すると、視聴者はその映画に共感しやすくなります。ラザルスの認知的評価のプロセスとして、この共感は理解されるかもしれません。
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感情の応答: 人々が映画の内容と感情的につながると、その結果として感動や泣く反応が起こることがあります。これは、ラザルスの感情の応答のプロセスと一致する概念です。
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適応と心の浄化: 映画による感動体験は、視聴者の心の浄化やストレス解消につながることがあります。ラザルスの感情の適応理論から、このプロセスを理解する視点が提供されるかもしれません。
感情の理論と適応の概念は、この現象を分析するための一般的な枠組みとして応用することができるでしょう。

泣く行為自体がストレス解消の効果を持つという研究もあるのですね。これも教えてください。
Gračaninらの2015年の研究「Why crying does more good than harm」では、泣く行為がストレス解消に役立つメカニズムについて調査されています。
主な調査内容
この研究では、泣く行為が心理的な機能を果たす仮説を立て、以下のような側面から分析しています。
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ストレスホルモンの排泄: 涙によってストレスホルモンであるコルチゾールが排泄される可能性について検討されました。泣くことで体内のコルチゾールレベルが下がると、心理的なストレスが減少する可能性があるとされます。
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自己鎮静の効果: 泣く行為には自己鎮静の効果があるとも提案されています。泣くことで感情が解放され、精神的な安定感が高まると考えられています。
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社会的支援の促進: 泣くことが他人からの共感や支援を引き出す社会的な信号となり得るという視点も提供されています。この共感によって、ストレスを軽減する助けとなるとされています。
方法論
この研究では、参加者に感動的な映画クリップを見せ、その後の感情的な反応と生理学的な変化を調査しました。泣いた参加者と泣かなかった参加者との間で、感情状態やストレスホルモンのレベルなどを比較しました。
その研究の結果、ストレス解消の効果を発見
Gračaninらの研究は、泣く行為がストレス解消の効果を持つ可能性を示しました。特に涙によるストレスホルモンの排泄、自己鎮静の効果、社会的支援の促進などが、心理的な健康を改善する要素として考察されました。
この研究は、「映画等を見て泣いてスッキリする」現象を理解するための重要な科学的根拠となるでしょう。泣くことで感情が解放され、ストレスが解消されるプロセスが、この現象の背後にある心理学的メカニズムを説明している可能性があります。

カタルシス効果を、映画で泣いてスッキリすると紐づけて解説してください。
カタルシス効果は、古代ギリシャの哲学者アリストテレスによって最初に提唱された概念で、感情の浄化や解放を指します。映画で泣いてスッキリする現象も、このカタルシス効果と密接に関連していると言えるでしょう。
以下、その関連性について具体的に解説します。
1. 感情の浄化
- カタルシスの定義: カタルシスは、感情の紛糾や緊張を解消し、精神的な浄化や安定をもたらすプロセスです。
- 映画との関連: 映画で描かれるドラマチックなストーリーや感動的なシーンに触れることで、視聴者は自身の感情を強く感じ、最終的に泣くことでその感情を解放します。このプロセスは、カタルシス効果として理解できます。
2. 共感と同一化
- カタルシスの側面: 視聴者がキャラクターの体験や感情に共感し、同一化することで、カタルシスが引き起こされることがあります。
- 映画との関連: 映画では、視聴者がキャラクターの喜びや悲しみ、挫折や勝利に共感することで、自身の感情が高まり、泣くことで感情が解放されます。
3. 社会的・個人的な調和
- カタルシスの影響: カタルシスは、個人の感情の調和だけでなく、社会的な調和にも寄与します。
- 映画との関連: 映画によって共有される体験は、人々の間で共感を生み出し、社会的なつながりを深めることもあります。また、個人の心理的なバランスを取り戻す手段ともなります。
結論
映画で泣いてスッキリする現象は、カタルシス効果の具体的な例として理解することができます。視聴者が映画の中で展開されるストーリーに共感し、感情を解放するプロセスは、感情の浄化、共感と同一化、社会的・個人的な調和の観点から、カタルシスの概念と深く関連しているのです。
このカタルシス効果によって、人々は心のバランスを回復し、リフレッシュすることが可能になると言えるでしょう。
今回のテーマに関連する論文・文献
- Lazarus, R. S., 1991, “Emotion and Adaptation“
- Gračanin, A., et al., 2015, “Why crying does more good than harm”
- Frijda, N. H., 1988, “The laws of emotion“
- Juslin, P. N., & Vastfjall, D., 2008, “Emotional responses to music“
- Cohen, D., 2001, “The social self: On being the same and different at the same time“